根管治療によって治癒した歯内ー歯周病変

患者さんは44歳の女性の方で、右下の奥歯が腫れているといって来院されました。

レントゲンを撮ると、右下の6番目の歯を支える骨が大きく失われており、歯周病の検査をしたところ12mmの深い歯周ポケットが認められました。歯周ポケットは正常な組織では2~3mmであり、12mmという数値は根の先まで進んでいる重度の歯周病と診断されます。

では、すぐに歯周病の治療を開始したのか?答えはノーです。

この歯は電気歯髄診に反応せず、歯髄が死んでしまっていると判断されました。これは、"歯内ー歯周病変"ではないかと考えました。歯内ー歯周病変とは、根の先の炎症と歯周病による炎症が交通した状態を言い、Simonらにより6つの分類に分けられています。

本症例では、全顎的な歯周病のリスクが無いことから、Primary Endodontic lesionをまず疑い、根管治療を開始しました。

根管治療中の写真です。基本に忠実に、ラバーダム防湿を行って感染制御を行い、マイクロスコープを用いて根の中を詳細に観察しました。

根の治療を何度か行うと、歯周ポケットは3mm程度となりました。これは、通常の歯周病であれば有り得ない回復のスピードです。

根の中が綺麗になったことを確認し、根管充填を行いました。根の治療によって根管内の感染源を除去したことで、失われていた歯槽骨が戻ってきていることが分かります。

この症例を歯周病と診断し、通常の歯周病の治療を進めていたら、どうなっていたでしょうか。歯周ポケットが治らないばかりでなく、歯周ポケット内の洗浄、掻把により正常な歯根膜組織を失っていたかもしれません。

歯科治療においては診断が非常に重要であり、高い治療技術を持っていても、診断が正しくなければ病気を治癒させることは出来ません。また、歯科治療は不可逆的な処置が主となるため、誤った診断による治療は患者様にとって害を与えてしまう可能性すらあります。

この事実を強く自覚し、学会や講習会への参加、論文の抄読などを通して、引き続き、診断力を上げる努力していきます。

田中亮祐

副院長

取得専門医・認定医

歯科保存学会 認定医

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たなか歯科医院
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