こんにちは! 院長の田中です。
このたび、私がその一部を執筆させていただいた本「行列のできる歯科医院 4」が全国の書店で発売されることになりました。これは、私と他3人の女性院長が開業のいきさつから歯科医院経営のノウハウについて語り、全体を経営コンサルタントがまとめているという形式のものです。
この執筆の依頼を引き受けるに当たっては、正直なところ、随分ためらいがありました。自分の内情を公表することに多少抵抗があったこと、果たして自分の経験で他の歯科医師の参考になるようなことがそんなにあるだろうかという疑問、学術的な文章ならともかく、自分のオリジナルな考えや思いを40ページもの文章にすることができるだろうかという不安があったからです。
出版社の方から、“歯科界の発展のために、若い歯科医師のために、なんとかお願いします!”と強く請われ、しぶしぶお引き受けしたというのが最初でしたが、実際に書かせていただき、今はこのような機会を与えていただいたことに心から感謝しています。
今回の執筆は、開業後16年間の軌跡を振り返る良い機会となりました。このような機会でもなければ、なかなか自分を振り返ることなどなかったでしょう。自分の行ってきたことや考えをまとめることにより、初心を改めてしっかりと認識できましたし、新たに発見できたこともありました。また、自分の書いた文章が、変な話ですが、意外と自分への戒めにもなったのです。
以下に、この本の総編著者である稲岡勲様からいただいたコメントを紹介させていただきます。
三田市の広大なニュータウンの医療ゾーンの一角に、たなか歯科医院があった。田中希代子先生が応接室に入ってこられたときは、一瞬スタッフの人かと思うくらいに若く見え、とても19歳の大学生と16歳の子供さんがいる先生には見えない!
田中先生と話していて思うのは、理想に向かって突き進む強固な意志の人という印象である。こういう書き方をすると何か固い、怖いイメージになるが、そうではなく、知的だが柔らかい、温かい明るい感じの先生である。先生も書かれているが、開業前に歯科医師である夫の丸二日間にわたる意識不明の交通事故、生後2ヶ月と2歳になる子供2人を抱えての呆然自失の状態から這い上がり、その後、夫である院長が次々に起こす医療事故に遭いながら、自ら院長となり、自分の専門としていた矯正だけではなく、一般歯科にも手を伸ばして徹底して研修を積まれている。「夜な夜な抜去歯牙で練習を重ねた…」と書かれているが、尋常ではない努力だと感銘さえ覚えた。
JIADSといえば、私のような素人でも、そのレベルの高い治療では定評があることを知っているが、そのJIADSの歯内療法コース、審美補綴コース、再生療法(GTR)コース、歯周治療コース、インプラントコース、同アドバンスコース等々、研修を総舐めにされている。国内だけでなく海外にも足を運んでおられるが、その治療技術向上への熱意、より上を目指しての執念は尋常ではない。雑菌が極めて少ないというインプラントのオペ室もそうした考えから作られているのだろう。こうした姿勢は、技術習得だけではなく、経営管理一般に及んでいる。例えば平成10年2月から院長を交替して、「医院の治療方針、経営方針が180度変わるに当たり、(中略)その変化に付いてこられないと判断したスタッフには退職してもらいました」と書いておられるが、こうした決断は強い信念なくしてはできるものではない。過去を引きずらない思い切った決断が院長交代以後飛躍的に業績が伸びた大きい理由であるように思う。
医院経営は、まず何よりも診断技術や治療技術に力を入れることが重要である。歯科医院にとって、研究・技術開発は一般企業の商品開発と同じであると同時に、その商品は患者に理解し、納得してもらわないと収入という業績に結びつかない。しかし、知識や技術に関する研究投資は経営的には即効性が無いから、患者サービスに走る傾向が強い。エビデンスに基づいた本当に患者の生体に対する深い理解と配慮、また磨かれた審美性が必要だと思う。研究投資はある一定の水準を超えて徹底して差別化し、且つある程度の時間をかけ実績を積み上げないと、具体的な形で収入に貢献しない。たなか歯科医院の場合、それが実に理想的によくバランスされているように思う。それは技術一辺倒でもなく、診療所の改装にもデザイナーを起用して、患者への配慮が十分なされているし、スタッフの技術教育やサービス教育にも患者との関係密度を高める配慮がなされている。
とくに印象深いのは、朝礼から“終礼”、“反省会”、“相互実習”、“ミーティング”などスタッフの学ぶ場が実に多いことだ。こうしたスタッフ教育や人事評価など、スタッフの管理面で特異性のあるすばらしいシステムを構築されていると思う。特に感心したのは、“給与条件変更希望調査票”である。この種のスタッフの希望を聞くことに少なくとも躊躇される場合が多いのは、スタッフの要求を抑え切れなかった場合の、副作用を恐れるからである。いや抑えたつもりが納得してなくて退職になってしまう危険性があるからである。しかし田中先生は調査票をもとに徹底した話し合いをもたれている。本人の課題は何かを気付かせ、それに挑戦させ、そうしてその成果を評価し、励まし、ときには誉め、「指導者がその過不足を上手く調整してあげると、その人の能力をしっかりとよい方向に伸ばすことができるように思います」と書かれている。
また父親の「経営者は我慢が大切や」という言葉を紹介されているが、「先生は父親の事業を通しての経営哲学を、自然に父親の背中から学んでおられるのかも知れない」とふと思った。先生と話してみて、その信念、決断力は、経営者として一流の域に達しておられるなと思ったことである。
以上のように、かなり過分な評価をいただき、とても恐縮しておりますが、逆にこのコメントに相応しい器になるよう努力しなければと改めて身を引き締める思いでおります。
院長 田中希代子